バドミントンで踏み込むとひざが痛い — フォームだけではない痛みの理由
「ネット前へ一歩踏み込んだ瞬間、ひざの前が痛む」「着地のたびに嫌な感じがする」。バドミントンを続けている方から、よくうかがう訴えです。
まず言われるのは「ランジのフォームを直しなさい」です。ひざとつま先の向きをそろえる、ひざを前に出しすぎない——どれも間違いではありません。ただ、意識しても痛みが変わらない方がいます。同じ練習をしていても、その人だけフォームが崩れるのには理由があるからです。
まず「どの動きで痛むか」を絞ります
バドミントンは動作の型がはっきりしている競技です。どの場面で痛むかを特定できると、原因の見当がつきやすくなります。
- ネット前へのランジで、踏み込んだ瞬間 前脚に体重が一気に乗り、ひざの前側が痛みやすい
- ジャンプや、後ろへ下がってからの着地 落ちてくる体を受け止めきれていないことがある
- サイドへの切り返し、方向を変える一歩目 ひざがねじれ、内側や外側が痛むことがある
ひざで受け止める力を、減らしているかもしれません
バドミントン選手のランジ動作を調べた学会発表があります(第52回日本理学療法学術大会)。ひざに痛みのある大学生バドミントン選手8名と痛みのない選手9名を対象に、打点の高さを2条件に変えて、ラケットを持つ側へ斜め45度に踏み込むランジを比べたものです。
打点を低くしたとき、痛みのない群は、踏み込んだ脚のひざにかかる力をほとんど変えませんでした。一方、痛みのある群では、打点が高いときと比べて約3割低い値でした。差が出たのはひざを曲げた深さではなく、ひざで受け止めている力の大きさです。
対象は大学生の選手ですので、年代や競技レベルの違う方にそのまま当てはまるとは限りません。そのうえで読むと、痛みのある選手ほど、低い打点という難しい場面でひざに力を引き受けさせない使い方をしていたことになります。意識して行っているとは限りません。
ここで押さえておきたいのは、これが痛みが出たあとの姿だという点です。順序を分けると、①足首や股関節が働かず、ひざに負担が集まって痛みが出る段階が先にあり、そのあとに②痛いのでひざに力を入れない使い方になる段階が来ます。この記事の後半で扱うのは、①のほうです。
ひざは、足首と股関節と負担を分け合っています
ここからは研究結果ではなく、一般的な考え方です。ひざは足首と股関節にはさまれた中継地点です。ランジの一歩で床から返ってくる力は、この3つの関節で分け合っています。この分担の関係を運動連鎖と呼びます。ひざが引き受ける量が減れば、その分はどこかへ回ると考えられています。
- 足首 着いた足で踏ん張る時間が延び、足首の前側が詰まりやすい
- 股関節・お尻 ブレーキを股関節側で強くかけ、付け根が張りやすい
- 腰 後ろへ下がる一歩やオーバーヘッドの構えで、腰を反って高さを合わせやすい
そして、この分担は逆向きにも起きます。踏み込みでも、着地でも切り返しでも、足首や股関節が働けないままなら、その分をひざが引き受けることになります。これが先ほどの①の向きで、ここから先で扱うのはこちらです。
足首では、前脚が着いたあとにすねが前へ倒れる動き(背屈)が浅いと、体を前へ運べずにかかとが浮き、ひざが内側へ入りやすくなります。背屈は過去の捻挫のあとに戻りきらないことがあり、詳しくは足首の捻挫が癖になるのはなぜ?でご説明しています。
股関節では、そこから体を折る動きが使えないと、踏み込みでひざの前側に負担が集まりやすくなります。フォームを直すより先に、直せる体にしておく必要があります。この考え方はスポーツ障害・コンディショニングでもご説明しています。
こんなときは、まず医療機関で診てもらってください
次のいずれかに当てはまるときは、セルフチェックやセルフケアを行わず整形外科を受診してください。
- ひざが抜ける・崩れるような感覚がある
- ひざが最後まで伸びない、曲がらない、途中で引っかかって動かなくなる
- ひざが腫れている、さわると熱い、水がたまった感じがする
- 体の発熱をともなうひざの腫れがある
- ひざから下のしびれ、感覚の鈍さ、力の入りにくさがある
- ひねった直後に音や衝撃があり、体重をかけられない
- 安静にしていても痛む、夜間に痛みで目が覚める
次の場合も、一度整形外科で診てもらうことをおすすめします。
- 数週間以上、同じ場面で同じ痛みが出ている
- 練習の翌日まで痛みが残る、痛む頻度が増えている
成長期は、ひざのお皿の下の出っ張りなど骨が成長する部分が痛むことがあります。未成年の方でこの部分を押して痛むときは、保護者に伝えたうえで受診をご検討ください。
自分で確かめておきたいこと
以下は、上の「すぐ受診」の項目に当てはまらない方が、現状を把握する目的で行うものです。動かしている最中に痛みが出たら、その場で中止してください。
- 足首の曲がり方: 壁の正面に立ち、片足のつま先を壁から10cmほど離します。かかとを床につけたままひざを前へ出し、ひざが壁に触れるかを左右で見比べます
- 動画で撮る: 練習中のランジや着地を横から撮ると、上体の倒れ方やひざの向きの左右差が分かります
ひざ以外にも働いてもらうために、自分でできること
以下は、日常生活で痛みが出ない段階、または医療機関から運動を再開してよいと言われている段階で行ってください。動かしている最中に痛みが出たら、その場で中止してください。
ふくらはぎの奥を伸ばすストレッチ
ランジで前脚が床に着いたあと、すねは前へ倒れていきます。この動きを止めやすいのが、ふくらはぎの奥にあるヒラメ筋です。ひざを曲げた姿勢で伸ばすと、この部分に届きます。
壁に両手をつき、伸ばしたい側の脚を後ろへ下げます。その足のかかとを床から離さないまま、ひざを曲げてすねを前へ倒していきます。アキレス腱の少し上あたりに伸びを感じたところで20〜30秒、左右2セットが目安です。
かかとが浮いた時点で、伸ばしたい部分から負荷が抜けます。前へ出す量ではなく、かかとが床に残っているかで深さを決めてください。
片脚のルーマニアンデッドリフト
ひざ以外にも働いてもらうには、股関節から体を折る動きが要ります。ひざを深く曲げずに上体を前へ運ぶ感覚をつかむための種目です。片脚で行うので、ラケットを持つ側とそうでない側の差も見えます。
踏み込みの一歩目を思い出しながら、前に出す側の脚で立ちます。ここから後ろの脚を伸ばしつつ、股関節を後ろへ引くように上体を倒します。ひざを曲げて沈むのではなく、股関節が折れて上体が下りる形です。太ももの裏が張るところまで倒したら、お尻に力を入れて起き上がります。左右8〜10回を2セットが目安です。
深く倒すことが目的ではありません。腰が丸まらずに動かせるところまでで十分です。体が横へ流れてしまうときは、壁ぎわで行ってください。ラケット側とそうでない側で違いが出るなら、その差を覚えておくと練習中も意識しやすくなります。
一宮市で、バドミントンのひざの痛みのご相談を
「フォームは直したつもりなのに、踏み込むと同じところが痛む」。ひざだけを見ていても、なぜそのひざに負担が集まっているのかは分からないままになりがちです。
当院では、理学療法士で元Jリーグトレーナー(FC岐阜)の院長が、痛む場所だけでなく全身の動きを確認したうえで施術を行っています。ご縁があってバドミントンの選手にも来ていただいています。必要に応じて、ストレッチやエクササイズもお伝えしています。曜日により異なりますが、夜は23時まで対応しています。